ニートの活用法

「唐突ですまんが東のエデンを見て思ったんだ」
東のエデン……、ハチミツとクローバーの絵ですねー」
「作画は羽海野チカ攻殻機動隊の監督、神山健治監督のアレですね」
「うむ。アレではクライマックス付近でニート集団の力でなんたら、という描写があるんだが……それをリスペクトして少し真剣にニートの活用法を考えてみた」
「に、ニートですかー……」
「活用法ですか。東のエデンのようにブレインとして使用するとか?」
「結局そういう頭脳労働方向になるとは思うが……アレは若干そのなんというか結果に重きを置いている。ニートの力でこんな事が! スゲー! じゃ困るんだよ」
「確かに、労働も学習もしていないご飯をうんこに変える仕事の人を称賛しても仕方ないですよね」
「そもそもニートってどういう人の事を言うんですかー?」
ニートとはNot in Employment, Education or Training の頭文字をとったNEETから来る造語です。教育を受けておらず、労働や職業訓練もしていない若者を指す言葉で、イギリスの政策スローガンが元ネタです。とはいえ、昨今の日本ではまた違った意味合いになってきていますが」
「単に無職でもニートだし、場合によってはフリーターもニートと呼ばれる場合がある。定義はあるんだがここでのニートは単に無職を言う言葉ではなく、仕事をしていないし、学生でもない、就職活動もしていない、日々ネットでニコニコ三昧、親の金で生きている、そういう者に限定する。ニートの非生産性と反社会性からニート自体を評価しようとする筋は危うい。ニートの現状を評価、改善して、僕はニートでもいいんだ! じゃ駄目なんだよ。人生とか、人間としてとかそういうのは置いておくとして、社会としてはニートは容認できない要素だ。ニート以外の職業は無いと困る人がいるが、ニートは居なくても困らない。むしろ多いと問題になる。ニートを助勢するような事は社会人としては言えないな」
「確かにニュースでもニートは社会問題だって散々言ってますよねー」
「結局のところ、僕達の生きる日本という国は僕達が働く事で会社が動き、僕達の税金で公共事業が成り立ち、僕達がお金を払うことで生活が循環するんです。ニートはそのすべてに対して反発的な趣がありますから。極端に言えば不必要です」
「勤労、納税、教育の三大義務ですねー。学校で習いましたよー」
生存権参政権、教育を受ける権利が三大権利だな。教育は義務と権利のどちらでもある。細かいことを言うと勤労も権利に属するんだが、あれは職業規制を受けない、とか雇用機会均等だとかそういう、働くのが当たり前という前提での権利だから割愛する」
「勤労は義務ですから。前提に含まれていて当然ですよ」
「とにかく実際問題ニートは生まれる。これは事実なのだから、いくらニートが不要だと言ってもそれが消える訳ではない。ならばそのニートの特性を生かして何かを成せるのではないか、というのが多分東のエデンニート拉致だと思うんだが、まぁその辺ちょっと思考しようと思った次第」
「で、どういう方針で考えていくんですか?」
「当然、当ブログの方針どうり、ニートには何が出来るか、の逆、ニートは何をしたくないのか、で考えていく事にしよう」
「うーん。働きたくないからニートなんじゃないですかねー? まぁ、当然といえば当然ですけどー」
「もっと細かく考えて見ましょう。例えば、毎日家でごろごろしているだけの仕事であればニートは喜んでやるでしょう。つまり仕事なら当然あるべき義務の何が嫌なのか、というのが焦点ですね」
「うーん……やっぱり責任のある事がやりたくない、とかなんですかねー?」
「毎日同じ繰り返しなのが嫌だ、とか?」
「時間に縛られたくない、とかもあるんじゃねーか? 仕事である以上大体8時間は働く訳だから、その8時間が嫌だ、とかな」
「家から出たくないとかー」
「誰かに使われたくない、とかも……あるいは」
「人と係わり合いたく無い、とかどーですかー?」
「色々あるかと思ったけど、大した理由は無いな。とりあえずまとめてみるぞ。
 1:1日の内自分の自由な時間が減るのは嫌だお(`・ω・')キリッ
 2:自分の好きな日に仕事したいお(`・ω・')キリッ
 3:家から出たくないお(`・ω・')キリッ
 4:誰かの部下とか嫌だお(`・ω・')キリッ
 5:でも責任のある仕事は嫌だお(`・ω・')キリッ
 6:かといって毎日同じ事の繰り返しも嫌だお(`・ω・')キリッ

 ……やっぱニートを擁護する必要はミリもないんじゃないだろうか……」
「仕事をしない、しか全部を埋められる要素がないですよー! しかもそれでも6になっちゃいますよー?」
「何個か目を瞑れば回避できる項目のある仕事も多いんですけどね。それこそ仕事を選ぶ権利だと思うんですが……まぁ、1はどう頑張っても無理ですねぇ仕事は時間とお金の交換ですから。他は自由業なり、SOHOなり、自営業なり、考えようもあるとは思いますよ」
「ともかく。何時までに何をしろ、というのは無理で、一つの業務を任せる事も出来ない。かといって同じ作業を繰り返させる事も出来ない……となると」
「「となると?」」
「情報フィルター、くらいしか思いつかんな」
「情報フィルター、ですか?」
「うむ。ニートが興味を持ったこと、持っている事から推測して、一つの情報に対してフィルタリングをしてもらう。ニートとは言え好みもあれば造詣が深い事柄もあるだろう。ゆえにニートが気が向いた時にでも、さまざまな情報に対しての考察を入れてもらう、ということだ」
「つまり、ブログに対してのコメント、のようなものを付けてもらう、ということですか?」
「そーいうことだ。企業や、メディア等にもコメントがつけられるようにする。当然荒れるだろうから、そういうコメントは基本的に誰が言ったか解るようにする……ここでまぁコメントすれば自動的でもいいし、参考になるコメントなら、という限定付きでもいいが、ある程度の金銭が発生する訳ようにすれば中々なんじゃないかな、というのが我が案だ」
「ざっくばらんですねぇ。例えばコメント一つで10円とか。かつ無駄に乱発するような案を押さえる為に身元確認の為にも本人認証を行う、とかですか」
「1日暇なニートがそれなりに時間掛けて頑張っても飯代くらいかなぁ、という程度という微妙なラインの金額設定でやってみたい。そういう所で暇つぶししつつ社会と繋がりを感じてもらい、逆にコメントから会社もある程度の見切りを入れて採用試験、とかね。まぁ所詮思考実験でしかないんだが。政府がニート用に向けて作成するポータルサイト、もしくはSNSのようなサービス形態なら、あるいは……。ネットには匿名性が必要、だという気持ちはわからんでもない……というか必要なんだが、部分部分では絶対に不必要な面がある。ならばそういう面を利用してみたい、という希望も含んでいるな。インターネットは最早冷蔵庫やらテレビと同じくらいの生活必需品だ。リアル≒ネットがほぼ成立する。ゆえに匿名性が欲しい箇所だけ、匿名性にすればいい。上記の案で言えば、どこの誰々まではわからなくても、その人がどんなコメントをしてきたのかを追える程度の履歴か、mixyのようにホームでも作って置けばいいんじゃないかとか、考えている」
「なんだか壮大な計画ですねぇー」
「まぁ、そうすると結局そのSNSもどきを管理する人員が必要になって、そんなの公務員雇えるかよ、とか、そもそもそんな回りくどい施策に予算はでねぇ、とか思いますけど。そもそもニートの適当な考察がそこまで参考になるのかも怪しいですし、認証も結局どうやって個人を識別させるのか、が面倒そうですね」
「ま、三人寄れば文殊の知恵、ってな。ニート2万人いればミサイルも迎撃出来るんだ。企業に大してアドバイスなり、労組紛いの事くらいは出来るんじゃねーか? それと認証で思い出したんだが、ネット接続に個人IDログイン式とか導入されねぇかな。実際ネット犯罪とか面倒くせぇし、俺は国民全員ネットはID管理で良いと思うんだけど」
「ID管理って、韓国方式ですか」
「実際問題、俺は国民にID付けて管理するのって賛成なんだよ。何をするにも自分の認証が必要になれば犯罪は多分……見かけ上増える」
「えー、増えるんですかー?」
「うむ。今まで隠れていた小さい悪事まで見えるようになってしまうからな。代わりに大きい犯罪はさらに捕まりやすくなる。俺はこのID管理にデメリットの方が浮かばないんだよな。ユーザー間のいざこざも、ネットログと、匿名性の廃止があればさっさと取り締まれるし……。よく匿名性が無いと意見が言えない、そういった少数意見も大切にするべきだ、っていう意見を見たりするけど、この民主主義国家で何言ってんの? とか思うんだよなぁ。まぁメリットデメリット計算の問題だな。ま、長くなってきたしこの辺りで思考終了のお知らせだ」
「いつも通りのぐだぐだ展開ですねぇ」
−−−
「しっかし、ニートというのは、どうやって生きてるんだろうか? 宗教でも無くては価値観ボロボロで、例えば明日生きる意味すら解らなくなりそうなもんだと思うんだが?」
「んー。毎日が日曜日、という感覚なんですかねぇー?」
「何を言っているんですか。皆さん、しっかりと教義はお持ちですよ」
「なん……だと……! やはり宗教か! 新手の経典使いか!?」
「ゲーム経典、もしくはネット経典です。Yahooニュースではネットが無くては生きていけない、という人が7割? くらいいるらしいですよ。うろ覚えですが。まぁ記事も見てませんのでサンプル数も実施対象もしりませんけど」
「超適当ですー!」
「たしかにな。ネットさえあれば色々な価値観に出会える。そこで自分にあったサムシング探して、となるのか……」
ニコニコ動画なんて良い例でしょう。例えば、知らないゲーム動画があったとします。普通の動画サイトなら多分ほとんどの人が見ないで終わるでしょう。しかしニコニコのコメントがあれば、大体どういう展開なのか、どういったリアクションをすればいいのかは、文字通りコメントで解る。だからニコニコではゲームを知らない人も気軽にゲーム動画を見ることが出来る。実況動画が多いのはおおよそこれが一番の理由だと思いますよ。これはつまり、そのゲームに置ける価値観をコメントを通じて不特定多数と共有しあう、という事に他なりません。だからニコニコは流行るんです。生きる為の宗教なんてもはやロートルですよ。これからはネットを価値観にして生きる。これがナウい
ナウいって、死語すぎますよぅ」
「ほほう。つまり、そのニコニコのコメントの価値観に相容れない奴が極度のアンチと化す、という訳か。なるほどもっともらしいね」
新興宗教と同じ原理ですよ。マジョリティでは居られない奴らの為に生まれたモノは、得てして大衆と逆に向かいます。それが他の多くの者達にとっては異常であり、違和感がある。だからそれが何かを考えるよりも先に拒絶せねばならない、という結論が来て、過剰な排斥運動に繋がるのです。人数も多いだけにね」
「普通に働いて、家族がいる人の隣で、毎日寝ているだけで幸せだー、というような事なのでしょうかー?」
「少し違いますね。家族が居る人に大して、家族の虐待楽しーなー! 位のギャップはあります。普通、という大多数に入れない奴の幸せというのは、その位に逆転させないと見られないのですよ。だから普通である人はそんな逆の価値観は認められない。少数の彼らの望む幸せの形は普通の価値観では不幸に値する状況だからです」
「うー、なんかドン引きですよー」
「今昔の宗教は、基本的にマイノリティへの反逆から始まっています。仏教も、キリスト教も、イスラームも。救われない人を救うというのは、それほどまでに難しい。ただ、昔よりも今は義務教育で基礎部分に関しては在る程度の方向付けがされていますから。神だのなんだのと言う事よりも、ネット上の動画が、とか、ネット上の情報が、という風に変わっただけです。そもそも科学だって貴方自身が実験と検証を行わない限り机上の空論でしかないのですからね。よく言われますが、科学も宗教ですよ」
「……なんだが、あたまがぐるぐるしてきましたよー」
「ま、反社会的な存在であるニートを救おうと考えたら、普通の社会的感覚では無理だろう、という結論になるのかな」
「折衷案としては、まぁ凡百ではありますがそれなりだとは思いますよ。現状のまま変化させる訳ではなく、社会との繋がりを持つ所から始めよう、というまさに鬱患者に対する基本的な対処法でしょう」
「うむぅ。なんというか当初の目的とは大分と違う場所に着地してしまった感じだな」
「いつもの事ですねー」
「と言う訳で、また次回」
「また次回ー」
「ではまた。ノシ」