罵倒されたい。

「という訳だ。罵ってくれたまえ」
「久々に呼ばれたと思ったらこれですか〜?」
「頭悪すぎますね」
「まぁ待て。言いたい事はわからんでも無い。がしかしだよ。とにかく俺達には圧倒的に罵倒が足りない」
「言ってることが変わってませんけれども〜」
「最後まで話を聞きたまえ。今のご時世癒しブーム。いや、ブームかどうかは知らんけど。ともかく世の中には人間賛美の文章が有り余っている。某だって大丈夫、それでも君は生きているじゃないか、とかね」
「そりゃあ人間誰だって生きてますから。何処の誰とも解らぬ輩に向けて応援メッセージを配信しようとなれば、究極的にはそうなりますよ。生存なんて応援される側の必要最低条件ですから」
「もしくは、頑張れ、とか大丈夫、とかの単語だな。何々だから頑張って、の前者を特定しない事で普遍性を得る訳だ」
「ほむふむ。理由はなんでもいいから慰めて欲しい、もしくは慰めたいって感じですね〜?」
「まぁそんなもんでしょう。もしくは理由なんて瑣末な問題でしかないよ、生きているという問題に対してみれば、という比較対処かもしれませんが」
「で、そこから一歩進むとおおざっぱ用例対処になる。日本人なら〜、常識なら〜○○で当然。だから諦めるな、もう一息! などと前フリをある程度限定『したふり』をするんだな」
「したふり、ですか〜?」
「その別ける対象があまりにもおおざっぱ過ぎるんだよ。日本人で、常識を持っている、なんて、日本語で書かれたblogの時点で読者のほぼ9割9分が該当してる。結局の所、その文章を読む人がとっつきやすいようにする前振り、ただの口上でしかないって事だ」
「極端な話、特定のグループ……濁すの面倒なので言ってしまうと宗教関係や、特定の政治思考などもこういう語り口ですかね。○○を信じていれば必ず救われる、だの、今の政治では人は救われない!今こそ革新の時!立ち上がれ○○党員!とか。これ、内部では前述通り、○○を信じている事、や今の政治が悪いと思っている事、新しい政治形態を求めている事、などが前提になっている人向けの文章になっています。つまりは上記のような前フリはそれ以外の人に向けた文章になっていないんです。稀に話題になりますが、○○の宗教団体の会報が変だとかどうとか、あれはまさにTHE外部の反応ですね」
「つまり、そういう応援……というか啓蒙思想みたいなものは、応援が必要無い他の人からみれば、意味の無い文章、ということになるんでしょうか〜?」
「それどころか気が狂っているように見えている可能性もありますよ。ほら、前提の時点で噛み合わない同士ですから。人外に見られていても、おかしくはないでしょう」
「うむむぅ。応援しようとしたら、逆に蔑まれるんですか〜……世知辛いですね〜」
「だからこそ、前提のところは大きく、含みを持たせるんでしょうね。前提さえ同じであればそれほど拒否反応は無いんじゃないですかね? ほら、生きてるんだもの、に反対しようとしたらそいつはじゃあ死んでるのか、ってなりますし。うむ、その筋で行くと完全に言いがかりな上に人格攻撃になりえますな」
「最初にあげた例なら、反対するなんてお前は日本人じゃない! お前には常識が無い! とかなー。ま、そんな事はどうでもいいんだよ。当blog方針通り逆に考えれば、ただ生きている事だとか、そういう前提……当たり前の事を気付く事が、何かの励ましに繋がる、のかもしれないけれど」
「……で、ここまでが前振りなんでしょう?」
「解ってきたではないか……では本題行くぞ! この世の中には応援メッセージは有り余るほど存在しているんだ、が。逆に言うと、蔑むメッセージというのはほとんど、と言って良いほど存在しない」
「うわ、言い切りましたね」
「っていっても、あれは駄目だ〜、とか、つまらない〜とか、インターネットではよく見ますよぉ〜」
「バッキャロウ! 生きているからは駄目だ、とかに日本人だから駄目だ、とか言ってるサイトがあるのかよ! ……いや、日本人だから駄目だってサイトはあるかもしれない。韓国とか、中国とか……いやこの筋はまずい! ともかく、詳細に詳細を重ねて駄目出しする事は説明であって、そのものズバリ罵りでは無い」
「ま、極端な話が、あのアニメはつまらなかった、という文章でも、詳しく書こうと思ったら中間に注釈が入ってしまうので、その該当アニメの説明になってしまう、と」
「ううぅ、意味が分からなくなってきましたよ〜」
「つまり、だ。あのアニメはつまらなかった(作画がへぼいので)、とかあのマンガはつまらなかった(展開に無理がありすぎるので)、という風になってしまうという事だ。その詳細が妥当かどうか、という話ではないし、その方向での罵り方を講釈している訳ではない。俺が言っている罵倒というのは某だから駄目、つまらない、悪いとか、そういう事ではない、というのは筋で解るな?」
「ん〜、つまり、無条件に許してくれたり、応援してくれている事の、逆をやってほしい、って事なんですかね〜?」
「そういうこった。理由無く応援してくれている人がいるのだ。理由無くDISってくれる人っていうのもこの世界には必要だとはおもわんか?」
「全然思いませんよぉ〜!」
「まぁ非常に簡単に済ませたので注釈すれば、あのアニメはつまらなかった、だからアレのファンはうんこ、などと詳細と主観が織り混ざった文章が繋がって行くので、物事は複雑化していくんですが……まぁ省略です。結局の所、詳細を省いて居るだけの話ですからね」
「理由のある悪意、もしくは自分自身以外が原因の悪態なんて要らないんだよ。俺が欲しているのは、無条件の悪意、もしくはただ俺自身に対しての悪態なのだ」
「……ただの変態ですよねぇ〜?」
「知れたこと! 今俺がここに生きている事、日本人であること、働いている事、食事をしている事、休んでいる事、ネットをしている事、寝ている事、呼吸をしている事、街を歩いている事、言葉を喋っている事、それら全てを罵って頂きたい! 特別な事なく、ただ平々凡々に生きている俺を理由無く淡々と罵って欲しいんだ! 当然のように女子に!」
「へ、変態過ぎて付いていけません……」
「……ただな。この筋にはまた問題があってだな」
「問題ですか〜?」
「応援はいいんだよ。生きている、日本人である、働いている、食事をしている、寝ている、なんだっていい。何をいつ応援したっていい。……けどな。罵倒となるとTPOをわきまえる必要が出てきてしまうのだ……」
「それらを”それら”というだけで否定してしまうと、否定している方にも因果が発生する、って事ですか?」
「そーいう事だ。全部が全部、当人に返ってしまうからな。とはいえ、少しずらそうとして、こんな時間まで働いているなんて(ry だとか、3食連続カレーを食べるなんて(ry 、こんな時間まで寝ているなんて(ry としてしまうと……。俺が言いたい、じゃなかった、言われたいのはそういう空気を読んだ発言じゃない。だから俺が何故女子に、と断ったかというと『男だから駄目』という言葉だけはどんな状況の女子が発しても、まぁ当然のようにごくごく普通の私生活には問題があるんだが……必要最低条件ではない、という理由がある」
「ふむふむ。某だから駄目、と理由があっても駄目だし、かと言って理由の無い駄目出しは、言っている本人にもかかる自己反省になってしまうー……と。面倒臭いですね〜」
「と、いう訳で無条件に罵倒してくれる人はこの世には少ない。だから世界のマゾ連中は仕方が無いので、その否定に材料を求めて行く訳だ。成績が悪いから駄目、ルックスが悪いから駄目、優柔不断だから駄目だとか、そういう理由ある否定で悦れるようになっていく……本当はただ否定して欲しいだけだっていうのにな。哀しい話だとはおもわんか?」
「頭が悪すぎて哀しいですよ……」
「だがな。最近では少々亜種が発生していてな。これは逆転ホムーランかもしれんのだが」
「逆転、ほむ〜らん〜?」
「その罵倒をTPOをわきまえなくて済む、フィクション、又は流行の非実在青少年に言わせるっていう寸法だ」
「要はマンガやアニメで罵倒されてみる、という事ですか?」
「ま、ドラマや小説でもかまわんがね。この辺になると最早オナニーの仕方的な話になってしまうというか、人間は電気信号だけで生きているのん? せつこー、となってしまうので、そろそろまとめに入ろうか。ほれカンペ(ぽい)」
「ん。これを読めばいいんですか〜?」
「うむ。前世紀最高の罵倒言葉が記された古文書から抜粋してある。この言葉で日本男子の全人口の半分を悦に至らしめ、人々は自らの行為に恐怖した……という伝説の一品だよ。では、どうぞ」
「はい、えーと……あんたバカぁ〜」
「……最悪だ……。最悪のオチだ……orz」
「ではまた次回(`・ω・´)キリッ」
「み、みなぎってるー!」
「ではまた次回という事で〜ノシ」